近代思想と神学−カント

ついでといったら何だけど、本の引用でカントの影響を少し紹介。
以下の考えを近代神学は受け入れ、キリスト教会主流派(リベラル派)ではほぼすべての人が、保守派・福音派を自称する人でさえもたぶん半数−つまりはキリスト者の8割以上?−がこういった考えを持っているんじゃないだろうか。


近代人は、科学の成立する領域と宗教的真理の領域は異なる領域だと考えている。科学と宗教の対立は、これを同一の領域に並べようとするところから生じるのであって、それぞれ別々の領域に成立するものであると考えれば別に矛盾は起こらないというふうに考える。



私は信仰に場所を空けるために知識を制限したとカントは言う。この有名な短い言葉の中に、知識や認識の成立する世界と信仰や道徳の世界とは、異なる世界だということが言われており、近代人や現代人は、たしかに、このようなことを当然のこととして前提しているということができる。だから、聖書の出来事の歴史的事実性というようなことに疑義が生じても、それは別に信仰を傷つけるものではないというように考える。
前者は、事実の領域、科学の領域、自然の領域であり、後者は価値の領域、道徳や宗教の領域、自由の領域である。今日の事実と真実の区別というような議論もこのようなカント的二元論を前提にする近代的思惟の枠組の中にあると言い得る。

(共に『哲学と神学』p.259)




哲学と神学 (関西学院大学研究叢書 (第50篇))

哲学と神学 (関西学院大学研究叢書 (第50篇))